新幹線の軌道内の音源測定 
新幹線車両の走行騒音は、車両の各所から音が発生します。
例えば転動音のPWL(音響パワーレベル)を測りたいとします。これは軌道内で計測する必要があります。タイヤとレールの接点から1m離れた点の計測を考えると、(なぜ1mかは別項で) 線路脇にポールを建てマイクロフォンが風圧で動かないように緊結します。
車両の走行時の風圧はかなりのもので、計測ジグが飛ばされたり、車両に巻き込まれたりすると大事故になってしまいます。なのでアンカーを打って堅固に建て込みます。軌道内の工作物の耐風圧の決まりがあるので、建て込み後に事業者が耐荷重を測定に来ます。二人がかりでばね秤で計りますが、全体重を掛けてくるのでポールがへし折られそうです。
さて、軌道内で計測したいときは色々な保安作業手順が必要となります。測定に当たっての必要な手続きをざっと考えてみますね。
1)まず、新幹線の工事管理者と見張り員2名が必要です。これらは資格講習と3夜程度の実績が求められます。(平成16年版の工事管理者免状を示します)新幹線と在来線の二つを持っていることを要求される場合もあります。
※新幹線事業者毎に独自の安全教育を行っており、これも受講歴がないと軌道内には入れません。
新幹線 在来線
営業時間内の軌道内の立ち入りは禁止されていますので、計測の前夜に装置を仕掛け、線路外から装置を起動し計測を開始します。その後、また夜間に装置を撤去します。つまり、計測に3日間は必要になります。(新幹線も在来線も同様です)
これは在来線のおおよその概念です

2)作業する夜間は線閉(線路閉鎖)の手続きが必要です。これは大変重要な手続きで、十分気を配りながら安全行動を行わないと大事故につながってしまいます。
※線閉の手続きができる人は、特別な講習を受け十分な軌道内の作業経験を求められます。新幹線でも昼間に特別に入れることがありますが、1m通路と呼ばれる広い側道で状況の確認作業しかできません。

3)夜間の運行ダイヤの確認をします。この場合は、列車間合い(おかしな言い回しですが終電と始電の合間、つまり、夜間のことですね)の保守用車、工事車両、他の作業などの取り合いを確認します。昔は夕方4時に保線区で対面打ち合わせを行い、夜10時頃に運行指令、施設指令などに確認し、送られてきた運行表のFAXのバージョン確認をしました。今はタブレットなどで最新情報を見ることができるようです。
※線閉手続きは特殊技術ですので、専業の業者に委託しましょう。

4)朝方の4時には、営業線が安全に運行できるように、確認車が基地より走行してきます。確認車の通過後は、もう軌道内の立ち入りが出来ません。
結構あわただしい作業ですので、タイムスケジュールなどの計画が必要です。ものの置き忘れは大事故になります。
それと使用する機材などは、建築限界と呼ばれる範囲内には置けません。(建築限界と言っても建物が建っている訳ではありません。運行に必要な最低限のクリアランスを示しています。)
触車事故は死に繋がります。
5)始業と終業時には安全の確認のために点呼を行います。作業区域に最も近い門扉から入っても、線閉後、き電停止時間を考えると実質3時間くらいしか働けません。後の時間は置き忘れの確認(現場確認、員数確認)にあてられます。
点呼 置き忘れ確認(七人の侍と言います)
結構、作業が密な割に4時半には門扉外に出されてしまいます。その後に当夜の作業日報を送ります。お疲れさまでした。

※特殊な言い回しが多々あります。作時帯:作業時間帯のこと。
※確認車、保守用車の運行があるため夜間でも信号機能は生きています。なので、レールを導通させるとレールにも信号電流が流れているので、担当者が飛んできてひどく怒られます。

※新幹線は架空線に2万5千ボルトの交流が掛かっています。2m以内に導通する物体を近づけてはいけません。勿論、人間も導通体です。き電停止後、検電接地(作業区間の前後で架空線と地面とを短絡させ、電線に触れても安全なようにする)を行なって作業します。感電防止です。
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