四季を代表する音

春の音と言えば、童謡の「春の小川」が思い出されますが、この歌詞では「春の小川はさらさら行くよ」となっており、雪解け水と推察される水量の多い小川で、あまり抵抗なく流れている様子が目に浮かびます。でも音風景としては、小川のせせらぐ音は「さらさら」ではなく、「ちょろちょろ」の方が合っていると思います。
なぜか?「ちょろちょろ」は「さらさら」より音量が多い感じで、1/f ゆらぎを持った音と言えるからです。1/f とは、周波数に反比例したゆらぎを持つ音で、自然界では多くみられ、人間には心地よく感じられるゆらぎであるからです。歌手の美空ひばり、宇多田ヒカル、徳永英明などの歌声にも表れているようです。又、これを利用して気になる騒音をマスキングして感じにくくするなどの利用法があります。

蝉の鳴き声と夕立

夏の音というとセミの鳴き声を思い浮かべます。よく「蝉が鳴き止むと夕立が来る」と聞きますが、なぜ雨が降ると分かるのでしょうか?これは、蝉は雨が降るのを本能で分かるみたいです。ですから、今まで鳴いていた蝉が鳴くのを止めると雨になると言われています。
人でも雨が降る前と言うのは何となく湿度が高いと感じますが、蝉は人よりもより敏感にその湿度の変化を感じ取っているのでしょう。感度のいい気象予報士として名乗りを上げても良いかもしれません。でも、時々、雨が降る前でも鳴き止まない蝉も見かけます。街中の公園などで多いようです。街中の公園では自然を感じにくい空間になっているのかもしれません。その様な蝉はたいていクマゼミ、アブラゼミ、ニイニイゼミだそうです。

枯れ葉とシカの鳴き声

百人一首にある有名な句として、「奥山のもみじ踏み分けなく鹿の声聞くときぞ秋は悲しき」よみ人は猿丸太夫ですが、古今和歌集ではよみ人知らずとなっているようで。秋になると雄の鹿が雌を思って鳴くとされ、人の恋情とあいまった擬人化された哀れさと、秋という物悲しい季節が一つになった主題として長く読み継がれてきた句ですね。何とももの悲しさがうまく表現されていますね。でも、鹿ってどんな鳴き声でしたっけ?聞いたことがないかもしれません。この句は、声を聞いたことがなくても、充分もの悲しいですね。

雪の日の静けさ

冬には雪がつきもの。東京でも年に1 回くらいは積雪があるとのこと。積雪があると、急に町が静かになったと感じた方も多いと思います。これは確かです。積雪が影響して道路交通量が減るためではありません。積もったばかりの雪は、音を吸う力(吸音力)が増すためです。これはふわふわとした雪のすき間で、音が複雑な反射を繰り返すうちに吸収されてしまうからなのです。研究者の報告によれば500Hz
以上では吸音率が0.8 程度、500Hz 以下では徐々に吸音率は低下しますが、200Hz 辺りでも0.5 程度はあるようです。これはよく吸音材として使われるグラスウール並みです。
町中に吸音材を敷き詰めた状態になるのです。
松尾芭蕉の俳句から四季を読み解く
(春)古池や蛙飛びこむ水の音
(夏)閑かさや岩にしみ入る蝉の声
(秋)冬知らぬ宿や籾摺る音あられ
(冬)木枯らしや竹に隠れてしずまりぬ
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